2019年3月、グーグルが新たなクラウドゲーム・プラットフォーム「Stadia」を発表しました。これを受けて、世界中がゲーム産業に注目しています。

勢いのあるゲーム産業は従来のコンピューターやコンソール(家庭用ゲーム機)、そしてモバイル端末用ゲームなどで構成されていますが、クラウドゲームもこうした数ある分野のひとつです。ゲーム産業全体では、2018年には1,310億米ドルを稼ぎ出しました。1これまでは、Electronic Sports (EA.US)、Activision Blizzard (ATVI.US)、Ubisoft Entertainment (UBI.FP)といった大手プレイヤーが支配してきたゲーム業界ですが、グーグルやマイクロソフトなどテック界の巨頭による参入で、ゲーム産業の成長は今後も続いていくものと見られています。

Newzooのレポートによれば、ゲーム業界はここ十年、年率約11%という二桁成長を着実に記録しており、下記の図1が示すように2021年には1,800億米ドル、2025年には3,000億米ドルの世界売り上げを達成すると予想されています。

 

1: 2012年~2021 世界のゲーム市場収益(セグメント毎)

出典: Newzoo Quarterly Update

 

人気の高い過去のゲームは今後も残ると考えられるものの、対戦型ゲームや白熱するeスポーツ分野の影響でコンピューターやコンソール向けのゲーム分野がさらに伸びるものと思われます。また、ゲーム内課金の増加や現行価格が値崩れしていないことにも後押しされ、ゲーム産業は魅力的な投資オプションのひとつになっています。2

 

ゲーム産業はなぜ伸び続けるのか?

これまでゲームの主要マーケットといえば北米、欧州、そして日本でした。しかし過去10年で、中国、インド、東南アジアといった新市場が急速に拡大しました。

ゲーム産業の中でも最も成長の速いゲームプラットフォームがモバイルゲームです。スマート・デバイスが入手しやすくなったことで、モバイルゲームにも手が届きやすくなりました。

3)  デジタル流通への転換
デジタル化により、メーカーは中間業者にかける販売コストや梱包、輸送コストを削減することが可能となりました。これらのコスト削減がゲーム価格の値下げという形で消費者に還元された結果、ゲームはより一層手頃になりました。

4) サブクスリプション型ゲーム

業界でもモバイルゲームを除けば最も勢いのある分野がサブスクリプション型ゲームです。「ゲームをプレイし続けるか」、あるいは「仮想グッズや仮想通貨を購入するか」、などゲームの世界でのより素晴らしい体験を求め、消費者は都度、アプリ内課金に対して支払いを行うかを選択することができます。

5) eスポーツの台頭

ここ数年、eスポーツは10億ドル規模のビジネスとして視聴・売上の両面で成長してきました。売上は視聴者の伸びと、スポンサー契約を含むeスポーツのマーケティングによってもたらされています。

1.世界市場の拡大

中国市場の急拡大

2018年、中国におけるゲーム市場の売上は全世界売上の約28%に相当する380億米ドルに上りました。近年、ゲーム産業が中国市場に本格参入したことと並行し、eスポーツやモバイルゲーム、サブスクリプション・モデルやストリーミング・サービスが台頭したことがゲーム産業成長の長期的な牽引役となりました。

しかし、ゲームは両刃の剣でもあり、そこにはデメリットもあります。ここ数年、中国政府は暴力的なゲーム・コンテンツのネガティブな影響やゲーム中毒が若年層に及ぼし得る社会的な影響について強く指摘するようになりました。その結果、産業全体の見直しのためとして、政府はゲームの認可に待ったをかけたのです。

そして2018年末、9ヶ月もの凍結期間を経て、政府はようやくゲームへの認可を再開しました。認可を待って滞留していた5,000タイトル以上のゲームが全て捌けるには時間がかかりますが、これは業界にとっては大きな追い風です。3

 

英国  ゲームは「動画+音楽」よりも稼げる時代に

Entertainment Retailers Association (ERA)によると、英国のゲーム産業規模は38.6億ポンド相当とされ、これは英国のエンターテイメント産業全体の過半を占めることになります。ゲーム産業成長の主な要因は、スマート・デバイスへのゲームアプリ搭載、ならびに多くのゲームやコンソールの流通が物理的なものからデジタルへと移行したことが挙げられます。4

東南アジアにおけるゲームの「爆発」

東南アジア各国—すなわちインドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、タイ、そしてシンガポール —では、経済と中流層人口が急成長しています。こうした地域でeスポーツが人気を博しているのは、中流層間で可処分所得が増加していること、そしてそれがゲーム等のレジャー向け支出の増加につながっていることで説明できます。図2でも見られるように、東南アジア諸国のオンライン人口の50%以上がゲーマーに分類されています。

 

2: 東南アジアのゲーマー分布図

出典: Newzoo

 

また、ゲーム産業成長のもうひとつの理由としては、同地域での英語使用の習慣が挙げられます。メーカーにとって、東南アジアは参入しやすい市場なのです。5

 

2.モバイルゲーム普及率の高さ
ゲーム産業で最も成長の速い分野とされるモバイルゲームは、その初期の頃と比べれば飛躍的に成長しました。2018年の同分野の売上は703億米ドルで、これはゲーム産業全体の51%に相当します。これが2021年には59%、売上にして実に1,060億米ドルにまで伸びるものと予想され、過去9年間で730%の成長を記録することになります。スマート・デバイスを所有する人が増えたことに加え、その成長の要因としては可処分所得の増加やゲームアプリが手頃な価格帯に落ち着いたことなども挙げられるでしょう。

 

テンセントやユービーアイソフトのような大手ゲーム開発会社や、ゴールドマンサックスのプライベート・エクイティ(未公開株式)投資会社、そしてKKRといった企業らは、ゲーム開発会社の成長とそのゲーム・コンテンツの充実に貢献しています。さらに、近年では各国政府もファンドを組んで現地のゲーム会社のクリエイティブや技術の向上を後押ししています。資金調達以外の面でも、現地の人材に対して研修を提供したり、クリエイティブや技術向上の面で必要な海外人材を誘致するといったことに尽力しています。モバイルゲームのエコシステムに見られるこれらの発展がゲーム産業の未来をより持続的なものへと変貌させていると言えるでしょう。6

 

3.デジタル流通への転換

高速で安定したインターネット接続とコンソールに搭載された大容量ハードドライブのおかげで、コンピューターゲームやコンソール向けゲームがデジタル流通されるようになってからしばらく経ちました。ゲームの選択肢は大幅に広がり、無制限且つ瞬時にダウンロード可能となり、消費者にとっては便利になりました。同時に、梱包資材の削減と空間の節約、ゴミの削減を実現することで、環境保全にも貢献しています。

デジタル流通への転換は普及の速度には影響するものの、昨今の消費者がどのようにゲームを楽しむかという点ではそこに本質的な変化はありません。コスト削減とゲーム入手の簡便化によって、今後ますます、快適な自宅や移動の車中でゲームにアクセスする人は増えることでしょう。

 

4.サブスクリプション型ゲーム

SpotifyやNetflixの成功からも見られるように、サブスクリプション・モデルは音楽と動画コンテンツには適していたといえます。多くの専門家は、ゲームがサブスクリプション・モデルの新たなフロンティアになるであろうと予見しています。サブスクリプション・モデルはゲーム開発メーカーにとって安定した収益源となり得るからです。

2019年3月、グーグルはクラウドゲーム・プラットフォーム「Stadia」を発表しました。このStadiaでは、プレイヤーは一ヶ月9.99米ドルでゲームを楽しむことができます。EAスポーツとマイクロソフトのXboxには既にサブスクリプション型のゲームプランがあり、ユーザーは100以上のタイトルからゲームを選んでプレイすることができます。アップルも同様にサブスクリプション型のサービス「Apple Arcade」をローンチしており、こちらは100タイトルを超えるアップル限定のiOSゲームにアクセスすることができます。しかし、従来のコンピューター、コンソール、モバイル・デバイス、あるいはクラウドなど形を問わず、確実に言えることが一つあります。それは、ゲーム業界におけるサブスクリプション・モデルの戦国時代はまだ始まったばかりだということです。

Netflix同様、ゲーム業界でもサブスクリプション・モデルで成功を収めるためには、メーカーはプレイヤーの心を引きつけ、ワクワクさせるようなコンテンツを開発する必要があります。人気のタイトルや面白いコンテンツ、そしてバグ除去やコンテンツの定期的なアップグレードといった優良サービスが顧客のロイヤリティを握る鍵となるでしょう。7

 

  1. eスポーツの台頭

2019年、eスポーツの売上が初めて10億円の大台に乗りました。スポンサー契約だけでもおおよそ4.5億米ドルの売上を記録し、全世界で視聴者は2018年比15%増の4.5億人に達しました。8

2016年には「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」の決勝を視聴した人の数が4300万人に上り、これは同年NBAファイナルの最終試合を視聴した3,100万人を凌ぐ数字となっています。さらに2018年にスーパーボウルを視聴した1億300万人に対し、「リーグ・ワールド(League Worlds)」を視聴した人は9,960万人まで迫っています。こうした例からも分かるとおり、eスポーツはもはやサッカーや野球、バスケットボールと同様、「観戦するスポーツ」のひとつになっているのです。9

eスポーツがこれほどまでに台頭した理由のひとつは、TwitchやYouTubeといったプラットフォーム上で楽しめるゲームのストリーミングが増えたことです。対戦を楽しむ、あるいはスキルを習得するといった目的に拘らず、多くの視聴者がゲームのストリーミングに惹きつけられ、NBAやNFL、そしてESPNといった従来からあるスポーツリーグですらゲーム会社と提携する形でeスポーツの流行に便乗するようになりました。

 

ゲーム産業に投資するには?

 

ゲーム開発会社

ゲーム産業への投資を検討する投資家の皆さんには、入り口としていくつかの方法があります。まずは、古参の大手ゲーム会社です。下表1にこれらの企業とその株式データを表示しています。

 

1: ビデオゲーム企業一覧

ティッカー 社名 時価総額(100万米ドル) 価格(米ドル) アナリスト向け収支報告 価格目標(米ドル)
TTWO.US Take-Two Interactive 13,726 121.28 21/5/1 134
EA.US Electronic Arts 27,245 92.45 24/11/2 111.2
ATVI.US Activision Blizzard 40,790 53.18 27/7/2 57.6
UBI.FP Ubisoft Entertainment 6,592 56.88 EUR 15/7/1 82.95

出典:ブルームバーグ 20191014日版

 

Take-Two Interactive社はこれまでに「レッド・デッド・リデンプション2(Red Dead Redemption 2)」や「シヴィライゼーション(Civilization)」、「グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)」、そしてNBAシリーズなど多くの人気タイトルをプロデュースしています。EA Sports社の最も人気のゲームである「FIFA」は過去20年に渡って支持されており、最新のプロジェクトではファンの結束を高めエンターテイメントとしてのサッカーの世界をさらに楽しんでもらおうとリバプールFCと提携しています。10また、Activision Blizzard社も人気メーカーのひとつで、「ウォークラフト(Warcraft)」、「ディアブロ(Diablo)」、「オーバーウォッチ(Overwatch)」、そして「ワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft)」といった素晴らしいゲームを含む膨大な数のタイトルを世に送り出しています。最近、「ワールド・オブ・ウォークラフト」の初期バージョンを再現してリリースした「クラシック」がフォロワーから熱烈に歓迎されたことで、多くのアナリストは同社の株に対し強気な見方をしています。

 

半導体チップメーカー

成長中のゲーム産業に投資するための二つ目の手段として挙げられるのが、半導体チップメーカーへ投資することです。NVIDIAコーポレーション(NVDA.US)とAdvanced Micro Devices (AMD.US)はeスポーツとゲーム産業興隆の恩恵を受けている二大メーカーと言えるでしょう。ゲーム人気が高まるほど、コンピューターやコンソール、スマート・デバイスへの需要も高まります。その結果、半導体チップへの需要も著しく増加しています。こうした需要の増加に加え、チップメーカーが絶えずイノベーションを通じてチップのスピード・性能向上に取り組んでいることも、ゲーム産業にとっては好材料に他なりません。例えば、7月にAMDがリリースした「ライゼン3000(Ryzen 3000)」シリーズはあらゆる面で成功を収め、一方でNVIDIAは次世代GPUを2020年初頭にリリース予定としています。これらの企業についてのさらなる詳細は下表2を参照下さい。

 

 2: 半導体チップメーカー企業一覧

ティッカー 社名 時価総額(100万米ドル) 価格(米ドル) アナリスト向け収支報告 (Buy/Neutral/Sell) 価格目標(米ドル)
NVDA.US NVIDIA Corporation 111,460 183 28/8/4 200
AMD.US Advanced Micro Devices 30,807 28.4 14/22/4 33

出典:ブルームバーグ 20191014日版

テクノロジー大手企業

グーグルやアマゾンのようなテクノロジー企業もゲーム産業の波への便乗を狙っており、グーグルは前述のとおりクラウドゲーム・プラットフォーム「Stadia」を2019年に発表しました。クラウドゲーム・プラットフォームとは別に、こうした企業はゲームストリーミングへの投資も行っています。グーグルの完全子会社であるYouTubeは、eスポーツストリーミングの主要プレイヤーのひとつでもあります。2014年にアマゾンに9.4億米ドルで買収されたTwitchも同様にプラットフォームを提供しており、2019年時点では株価時価総額が37.9億米ドルに達しています。同社はゲーマー向けにリアルタイムのストリーミングを行う世界有数のプラットフォームであり、同時視聴者は2018年から17%アップし、平均125万人とも言われています。これらの大手企業がこぞってゲーム産業へ参入していることからも、伸び続ける同産業がどれほど利益を生んでいるかが分かるのではないでしょうか。下表3はアナリスト予想を含む、グーグルとアマゾンの株式関連情報です。

 

3: ゲーム関連のテクノロジー大手企業一覧

ティッカー 社名 時価総額(100万米ドル) 価格(米ドル) アナリスト向け収支報告 (Buy/Neutral/Sell) 価格目標(米ドル)
GOOGL.US Google inc 837,000 1207 39/6/0 1410
AMZN.US Amazon 849,691 1718 53/2/0 2265

出典:ブルームバーグ 20191014日版

ゲーム関連上場投資信託

最後に、ゲーム産業でより分散した投資を目指す投資家の皆様向けにゲーム関連上場投資信託をご紹介します。以下のリストの銘柄について投資ポートフォリオへの追加を検討されてはいかがでしょうか。

 

4: ビデオゲームETF

ティッカー 社名 時価総額(100万米ドル) 価格(米ドル) 経費率 設定日
GAMR.US ETFMG Video Game Tech ETF 81.7 40.9 0.75% 2016/3/9
ESPO.US VanEck Vectors Video Gaming and eSports ETF 37.34 33.32 0.55% 2018/10/16

出典:ブルームバーグ 20191014日版

ゲーム産業は長期戦の勝者にふさわしい

これまでゲーム関連銘柄は、そのパフォーマンスが開発者のコンテンツ企画能力や開発頻度に左右される、変動の大きな銘柄であり続けてきました。しかし、サブスクリプション・モデルへの移行は開発企業に一貫した収益もたらし得ます。その傍らで、こうした企業はイノベーションを起こし続けることで、ゲーマーに素晴らしいコンテンツを届けるとともに株主には力強いパフォーマンスを提示できるでしょう。ゲーム産業とそれを取り巻くエコシステムの継続的な発展は業界の展望に対する期待感を強めており、飛躍を追い求める投資家に対し投資機会としての魅力を訴求しています。

 

この情報は20191014日時点で最新のものです。

 

 

 

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参考:

 

出典:https://www.poems.com.sg/market-journal/5-reasons-to-invest-in-the-video-game-industry/

 

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