概要

 

はじめに

ESG(環境、社会、ガバナンス)投資は、社会的責任投資、ミッション関連投資、またはサステナブル投資と実質的に同じ意味を持ち、倫理的、個人的、または道徳的な関心を投資プロセスに組み込んだ投資として定義されてきました。

ESG投資の起源は数世紀前に遡り、個人的な宗教的価値観に基づく投資がその始まりと言われています。社会貢献活動の拡大により、ESG投資の存在感は年々高まっています。ベトナム戦争時代に武器を製造した企業のボイコットから、人種差別的なアパルトヘイト政策をとる南アフリカからの投資引き揚げに至るまで、投資家や企業の倫理的・個人的・宗教的・社会的価値観が投資を動かす大きな要素となっています。1

ESG投資の重要性は今後ますます高まり、投資の世界でも重要なトピックとなりつつあります。

米SIF財団は、「サステナブルで責任あるインパクト投資動向」のレポートの中で、2018年のESG投資の資産運用額が12兆ドルに達し、運用資産全体(46.6兆ドル)の4分の1にまで拡大したと報告しています。これは2016年の前回の調査と比較すると38%の増加です。2

ESG投資が増えた最大の要因は、顧客からのESG投資ファンドや金融商品に対する需要の増加と、運用ミッションと社会的利益を追求する機関投資家のニーズによるものとされています。

 

ESGファクターとは

ESG投資では、「環境」、「社会」、「ガバナンス」の3つの視点から、企業またはビジネスへの投資の持続可能性と倫理的インパクトを測定します。これまでの投資収益率といった財務情報に、企業のESG(環境、社会、ガバナンス)に関する情報を組み込み評価します。3

ESGファクター 内容
環境 汚染対策、クリーンな代替エネルギーの導入、持続可能なビジネスの実践などを通して環境への負荷削減に積極的に取り組む企業
社会 人権と多様性の尊重、消費者保護の重視、非道徳的産業(タバコ、アルコール、ギャンブル、兵器)の除外、動物福祉の推進に取り組む企業
ガバナンス 取締役会の独立性、内部統制、監査プロセス、情報開示の透明性など、厳格なコーポレートガバナンスの実践に取り組む企業

投資の意思決定プロセスにおいて、従来の財務情報にESGファクターを組み込み企業を分析します。ESGファクターは、企業の将来的な財務パフォーマンスや持続可能性をより適切に判断するのにも役立ちます。

例えば、公正な労働慣行を通じて人権と多様性を重視する企業は、幅広い人材層にアプローチすることができるため、長期的な財務状況が安定します。

逆にESGファクターを疎かにすると、様々なリスク(法律、規制、運用、財務、評判等)に晒されます。

 

ESG投資の評価指標

1:投資家向けESG評価指標

2ESG評価基準がビジネスに及ぼす影響

ESG投資の3つの目的

投資家は様々な理由でESG投資を採用しますが、その目的は主に3つ(インテグレーション、個人的価値観、社会的インパクト)に分類することができます。4

カテゴリー 目的 内容
インテグレーション ESGファクターの組み込みによる投資成績を改善 優れたコーポレートガバナンスを実践している企業や構造的変化が追い風(または逆風)になるビジネスモデルを展開する企業の特定
個人的価値観 ESGファクターの組み込みによる投資と個人的価値観の一致を図る 投資家の価値観に基づく目標を中心に据え、倫理的、社会的、政治的または個人的な信条と投資の一致を図るための手段の提供
社会的インパクト ESGファクターの組み込みによる影響力の行使 環境問題や社会問題の解決を図る企業の特定

 

ESG投資が拡大する理由

ESG投資に注目が集まり、企業評価にESGファクターの活用が進められている点にはいくつかの理由があります。

1. 代替エネルギー

技術の進歩により、代替エネルギーが手頃な価格で利用できるようになりました。したがって、将来的には代替エネルギーや再生可能エネルギーに切り替える方がより経済的になる可能性があります。原油や天然ガスなどの有限エネルギーへの過度の依存は、供給不足が発生した時に大幅な価格変動を引き起こします。

2. グローバルサプライチェーンネットワーク

多国籍企業(MNC)とは、母国以外の少なくとも1つ以上の国で商品の製造やサービス提供を行う企業組織です。国境を越えた事業活動を行うことで、多国籍企業は各市場が提供する競争上の優位性(安い人件費、資源、熟練工など)を活用することができます。

複数の市場で事業を展開する多国籍企業は、汚職、不公正な労働慣行、環境悪化などの問題に対応しなければなりません。こうした問題に対応できないと、グローバルサプライチェーンに混乱を招き、高い代償を支払うことになります。

3. 人口動態の変化

ミレニアル世代とジェネレーションX世代の人口が近い将来、ベビーブーマーの人口を上回ることになりそうです。人口構造の変化は、ビジネス、政治、経済などの分野を大きく変えることになります。

さらに、史上最大級の富の世代間移転が起きつつあります。今後30〜40年間に、30兆ドルの資産がベビーブーマーからその子供たちに移転すると推定されています。6

富を相続する世代のお金の使い方や投資判断は、その親世代と異なります。バンクオブアメリカ・メリルリンチは、ミレニアル世代が今後20年から30年の間にESG投資に15兆~20兆ドルを投じると予測しています。7

 

3MSCI ESG研究で注目すべきポイント

4. 規制変更と国際協定

2008年の世界金融危機以降、規制当局は、ステークホルダーの利益を保護するために、企業のコーポレートガバナンス強化を推進してきました。資本市場のエコシステムを育むためには、健全なコーポレートガバナンスが不可欠です。8

CFA協会によると、多くの法的管轄区域において、企業はマテリアルなESG情報をステークホルダーに対して開示・報告する義務を負っています。9例えば、中国は持続可能な未来の実現に向けて、環境情報開示に関する新たな報告制度を義務化する予定です。

さらに、気候変動は現実であることが広く受け入れられています。温室効果ガス削減などの緩和策は、パリ協定や京都議定書などの国際協定で定められており、その目的は、国際的な枠組みを通して、参加国の気候変動と環境悪化に対応する力を強化することにあります。世界各国で活動する多国籍企業には、気候変動との戦いにおける世界的な取り組みに貢献することが求められています。10

5. 社会規範の統合

以前には、社会的責任の規範は国や地域によって異なりました。

インターネットの発達により、国際メディアやソーシャルメディアネットワークを介して相互接続された世界が形成されました。国境のないインターネットは、世界の人々の文化的・社会的規範を変える可能性を持ちます。社会規範の統合は、世界的な社会運動の高まりにつながりました。

ソーシャルメディアのネットワーク効果を活用して、企業は、肯定的評価を獲得し否定的評価を回避するために、ESGの課題に取り組むことが求められています。

 

ESG関連ETFの登場

iShares MSCI USA ESG Select ETFは、世界で初めてESGをテーマにしたETFとして2002年に登場しました。それ以来、ESG関連ETFやETPの数は着実に増加し続け、2018年末までに208のESG関連ETF/ETPが世界的に上場されています。11

ESG関連ETF/ETPの運用資産総額(AUM)は、2018年末で224.7億ドルに達しました。

ESG関連ETFは、財務目標だけでなく、個人的価値観や社会規範を踏まえて投資先を評価する投資家には便利な投資手段です。マーケットレポートやニュースを通してESGレーティングの高い企業を探す代わりに、ESG関連ETFに投資することでESGエクスポージャーを持つことができます。

ESG関連ETFの投資手法

ESG関連ETFは、投資手法に応じていくつかに分類されています。そのうち、ネガティブスクリーニング(特定の業界を投資対象から除外)とポジティブスクリーニング(ESG評価の高い銘柄の組み入れ)の2種類のアプローチが主に使われています。

インターネットの普及により、インデックスプロバイダーやETF発行会社はESGの研究データに高速かつ低価格でアクセスできるようになりました。これによりESG指数へのESGインテグレーション組み入れが促進され、ETF発行会社は様々なアプローチに基づくETFを上場できるようになりました。12

 

4:排除/ネガティブスクリーニングのプロセス

5:包括的/ポジティブスクリーニングのプロセス

一部のESG関連ETFは、アクティブ運用手法を採用し、ESG基準に基づき構成銘柄が選定されています。

ESG基準に沿ったETFには、他にもインパクト投資やテーマ投資を中心にしたETFがあり、性別の多様性や代替エネルギーなど、特定のテーマを持つETFも含まれます。

ESG ETFの例

 

ETF iShares ESG MSCI USA Leaders ETF Xtrackers MSCI USA ESG Leaders Equity ETF Vanguard ESG International Stock ETF Vanguard ESG US Stock ETF
ティッカー SUSL USSG VSGX ESGV
取引所 NASDAQ AMEX AMEX AMEX
AUM (US$) 1.40 billion 1.19 billion 373.7 million 519.10 million
経費率 0.10% 0.10% 0.15% 0.12%
銘柄数 322 323 3420 1594
トップ3銘柄
  • Microsoft Corp
  • Alphabet Inc Class C
  • Alphabet Inc Class A
  • Microsoft Corp
  • Alphabet Inc Class C
  • Alphabet Inc Class A
  • Nestle SA
  • Tencent Holdings Ltd
  • Alibaba Group Holding Ltd
  • Microsoft Corp
  • Apple Inc
  • Amazon.com Inc

ETFの情報は2019814日時点で最新のものとなります。

 

おわりに

投資家のニーズ、目標、リスク許容度などが考慮されない、従来のファンダメンタルズ分析(収益、株価収益率、売上成長率、時価総額)は、将来的な企業のパフォーマンスや適性を評価する上で不十分かもしれません。

投資家のポートフォリオ全体、または現在の相場環境における投資戦略をより適切に評価するためには、ESGファクターを考慮に入れたより包括的な投資アプローチが必要です。多数の研究で企業の財務パフォーマンスと非財務パフォーマンス(産業セクターや戦略に関連するESGの取り組み)の間に正の相関関係があることが示されています。13

構造変化の進展とともに投資家の社会的意識が高まることにより、ESG基準に準拠したETFの数は今後も増え続けそうです。

 

 

 
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参考:

 

出典:https://www.poems.com.sg/market-journal/making-an-impact-with-esg-etfs/

 

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