概要

 

はじめに

グーグル (Google/ NASDAQ: GOOGL)やフェイスブック (Facebook / NASDAQ: FB)、アマゾン(Amazon / NASDAQ: AMZN)といった米国テック界の巨大企業には馴染みがある方も多いと思います。しかし、今、中国で急速に進むテクノロジー革命が世界の注目を集めています。アリババ(Alibaba/ NYSE: BABA)、百度(Baidu/ NASDAQ: BIDU)、テンセント(Tencent/ HKEx: 0700)といったグローバルなテック企業の数々が世界を舞台にのし上がり、技術革新やブレークスルーを通じて新境地を開拓しています。

 

中国インターネットコミュニティの概観

2018年12月時点における中国のインターネット利用者数は8億2900万人に達しています。1140億人の総人口に対しインターネット普及率は59.6%に留まるものの、米国の実に3倍という絶大なスケールを誇っています。2

 

1: インターネット利用者比率の中米比較2

中国の「万里のファイアウォール」
中国国内の厳しい規制と検閲は、フェイスブックやグーグル等の米国テック企業が同国の8億を超えるネットユーザーにリーチし、同国で牙城を築くのを阻んできました。この恩恵を受けて市場を独占しているのが中国のネット企業です。結果として、中国と米国ではそれぞれに個別のテクノロジーエコシステムが確立されました。

 

米中両国のインターネット商品・サービス例

検索エンジン
中国 米国
百度 – Baidu (NASDAQ: BIDU)

捜狗 – Sogou (NYSE: SOGO)

Google (NASDAQ: GOOGL)

Yahoo (NASDAQ: AABA)

ショッピング
中国 米国
拼多多 – Pinduoduo (NASDAQ: PDD)

淘宝 – Taobao (NYSE: BABA)

京東商城 – JD.com (NASDAQ: JD))

Amazon (NASDAQ: AMZN)

eBay (NASDAQ: EBAY)

電子決済
中国 米国
支付宝 – Alipay (NYSE: BABA)

微信支付 – WeChat Pay (HKEx: 0700)

PayPal (NASDAQ: PYPL)

Venmo (NASDAQ: PYPL)

動画
中国 米国
优酷 – Youku (NYSE: BABA)

Bilibili (NASDAQ: BILI)

腾讯视频 – Tencent Video (HKEx: 0700)

YouTube (NASDAQ: GOOGL)

Netflix (NASDAQ: NFLX)

ソーシャルメディア
中国 米国
微信 – WeChat (HKEx: 0700)

微博 – Weibo (NASDAQ: WB)

Facebook (NASDAQ: FB)

Twitter (NYSE: TWTR)

Instagram (NASDAQ: FB)

 

中国のネット産業成長に拍車をかける構造トレンド
中国の構造トレンドは同国のテック産業に成長機会を開き、ネット企業が名を上げるのに一役買いました。こうしたトレンドの例としては、急速な都市化や技術開発、経済力のシフト、そして人口動態・社会の変化といったものが挙げられます。

 

急速な都市化

中国の永住者における都市化率は2018年のデータでは59.58%で、2030年には70%に達すると予想されています。都市部での経済成長が続いていることを鑑みれば、都心への移住は今後も増えていくものと思われます。

都市部への移住が続けば、雇用や賃金の増加も期待されます。これに伴い、都市住民の可処分所得は地方住民の3倍近くに膨れ上がると予想され、これが消費や投資、さらなる雇用を後押しすることになります。

また、中国都市部のインターネット人口は2018年12月時点で6億7百万人と、国全体のネット人口の73.3%を占めており、この数字は都市化率の上昇に伴いさらに増加することでしょう。

 

2: 地域別にみた中国のネットユーザー人口比率1

過去のデータからは、テクノロジー株のような循環株に経済成長との高い相関があることが示唆されています。

 

技術開発

2007年、グーグルは携帯電話業界の企業団体と組んでオープン・ハンドセット・アライアンス(OHA)を発足しました。このコンソーシアムは、Androidを携帯電話向けのオープンソース・オペレーティングシステム(OS)3 として確立することを目的としていました。スマートフォンメーカーは自社開発デバイスへのAndroidのインストールやカスタマイズを無料で行えるようになり、メーカー側での独自OS開発やライセンス取得の必要がなくなったのです。

これがメーカー側の負担する開発コストダウンを促進した結果、スマートフォンの売値が下がり、アップル社のiOSのスマートフォン市場独占に歯止めをかけることになりました。

低価格のスマートフォンが広く浸透したことで、途上国や新興国でもスマートフォンが手に入りやすくなりました。実際、中国においてはインターネットユーザーの98.6%がモバイル機器を使用してインターネットにアクセスしています。4

 

図3:インターネットアクセスにモバイル機器を使用しているユーザー数(中国国内)1

4:インターネットアクセスにモバイル機器を使用するユーザー比率(中国国内、2018年)1

中国市場では独自にカスタマイズされたAndroidが使われていますが、これはスマートフォンメーカーがグーグルの一連のサービスを取り入れることなくAndroidをベースのOSとして使用しているためです。

同国ではGmail、Google Maps、Google Play Storeといったグーグルアプリへのアクセスが制限されているので、国内のテック企業にとっては米大手テック企業の入り込めない国内市場の空白をより容易く埋めることができるのです。

 

経済力のシフト

2000年に米国の一人当たりGDPの8%に過ぎなかった中国の一人当たりGDPは、今年米国の30%にまで増加しました。5この飛躍的な成長は、同国における多額のインフラ投資と輸出を目的とする製造拠点への手厚い支援、そしてイノベーションへの投資強化といった同国の一連の動きで説明することができます

さらに、中国政府は「高品質な経済成長」という目標の達成を目指し、5G、AI、IoTに代表されるITインフラ構築を加速するとしています。同国のデジタル経済は4.5兆米ドルに相当し、これは2018年の同国GDPの34.8%を占めています。6

今なお続く経済成長は数億の民を貧困から救い出し、基本的ニーズ以外に使用できる可処分所得のある中流層も激増しました。7可処分所得が増えたことで、中国の消費者はインターネットへアクセスしたり、携帯電話の契約をしたりすることが可能になりました。

 

人口動態・社会の変化

1979 年に中国で導入された「一人っ子政策」は40年近く続き、2016年にようやく正式に廃止されました。この政策は顕著な人口動態上の社会現象を生み出しました。2027年に総人口の36%を占めることになる1990年〜2009年生まれの人たちがしばしば国の「小皇帝」と呼ばれるようになったのです。8

すっかり甘やかされて育ったこの世代の一人っ子たちは、上の世代と比べて次の2点で大きく異なっています。第一に、「小皇帝」世代は両親および祖父母からの金銭的援助を受けており、両親を通じた世代間の富の移転先も自分一人というケースが殆どであることです。第二に、この世代が育った時代は丁度テクノロジーとデジタル化の恩恵を受けて中国人の生活の質が急激に向上した時期と重なっています。

このため、テクノロジーに精通したこれらの若き消費者は、上の世代の消費者と比べ高い購買力を持ち、イノベーションへの感度も高いと考えられます。こうした若年層の消費パターンを追うことで、中国のテック系・IT系企業は、より消費者ニーズを満たした新製品や新サービスを投入することが可能となりました。

 

中国のIT企業はどのように未来の経済を形成できるか

政府や国内のテック企業から多額の投資や助成を受けて、中国経済は今後大きな変化を迎えることになるでしょう。その暁には、国内の消費者も今とは違う形でモノやサービスを消費することになると考えられます。中国は製造拠点からデジタル時代の優れたイノベーターへ進化すると見られているのです。

 

スーパーアプリの台頭

私たちは日頃個々のタスクに特化したケータイのアプリを使っていますが、中国のケータイユーザーの間では既に関連のない複数のタスクをこなすスーパーアプリがお馴染みとなっています。テンセント・ホールディングスのWeChatやアント・フィナンシャルのAlipayがそうしたスーパーアプリの代表例です。

これらのスーパーアプリを使うことで、個別のアプリをダウンロードすることなく、第三者企業のサービスを利用することができます。9こうした第三者企業のアプリは同国では公式に「ミニプログラム」と呼ばれ、スーパーアプリ内で商品やサービスのエコシステムを形成しています。

スーパーアプリ成功の鍵を握っているのは、アプリ上のモバイル決済システムで、これらの決済システムのおかげで前述のテンセントやアント・フィナンシャルはより幅広い事業者やベンダーとの収益化機会を創造することができるのです。

 

図5: 従来型アプリvs スーパーアプリ9

「データは新しい石油」

2006年に数学者のクライブ・ハンビー氏は「データは新しい石油」だとコメントし、データが石油に替わって21世紀の最も重要な資源になると示唆しました。中国経済が消費中心へとシフトしていく中、特定の消費者を探し出し、そのニーズに対応していくことが企業の競争優位性向上に最も重要な要素となっています。

同国でスーパーアプリが広く普及したことで、企業らは消費者行動や志向、支出習慣について核となる情報を抽出することができるようになりました。クラウド・コンピューティングAI、機械学習のような新たなテクノロジーは企業によるデータ解析能力を押し上げ、豊富なデータセットからは優れた洞察が得られるようになるでしょう。

消費者データを収集し解析することで、中国のネット企業らはより個人に合わせて最適化されたコンテンツや商品、サービスをエンドユーザーに提供できるようになっています。その一方で、ユーザーエクスペリエンスの向上は顧客の獲得と引き留めに貢献します。さらに、こうした消費者情報から得たアイディアと5Gテクノロジーの採用が新製品や新サービスの開発を後押しし、それらがさらなる将来の成長機会を提供します。

 

5Gテクノロジーを待ち受ける競争

モバイルテクノロジーとネットワークの第五世代を指す5Gは、データ速度の改善、レイテンシ(待ち時間)の短縮、コスト削減、そしてシステム容量の拡大を実現します。

2020年から2030年にかけて、中国の5Gテクノロジーへの投資は4,110億ドルに上ると言われ、10 また国内の5G利用者数は2019年の3,190万人から2022年には5億8,830万人にまで拡大すると予想されています。11

しかし、5Gは単なるデータ速度の向上を意味するわけではありません。新商品や新サービスにとっての基礎を築くのです。新産業は相互に補完され、つながっていきます。そして、こうしたつながりが様々な商品・サービスの互換性を強化することで、5Gテクノロジー利用はますます促進されていくのです。

 

6: 5Gテクノロジーで補完される産業と産業間のつながり

中国で5Gインフラが整備されることの恩恵を最も受ける産業と考えられるのが同国のネット企業やアプリ開発企業です。5GテクノロジーはAR(拡張現実)やVR(仮想現実)エンタテイメントといった現実世界アプリケーションや、IoTデバイスにおける機械同士のコミュニケーション、そして自動運転車などのイノベーションにつながる低レイテンシで信頼性の高いコミュニケーションといったものを実現可能にするでしょう。

5Gテクノロジーは商業利益をもたらす一方で、軍事利用されて戦争やサイバーセキュリティの未来の展望を大きく塗り替える可能性があります。12このため、中国がテクノロジー拠点として興隆することや中国テック企業によるデータのスパイ活動疑惑を阻止したいと願う米国にとって、新テクノロジーは最大の関心事なのです。

 

上場投資信託(ETF)について

市場には様々なテーマ型の上場投資信託(ETF)が存在しており、これらの上場投信を通じて投資家は中国のネット・テック産業銘柄に分散投資を行うことが可能です。こうしたテーマ型のETFは、中国の構造変化をバネに利益を上げる企業を特定し、先進的投資アプローチを志向する投資家にとっては便利なツールといえるでしょう。

下記に、こうした中国ネット・テック産業銘柄を含むETFの例を挙げておきます。

ETF KraneShares CSI China Internet ETF Samsung CSI China Dragon Internet ETF Mirae Asset Horizons China Cloud Computing ETF Invesco China Technology ETF
ティッカー KWEB 2812 2826 CQQQ
取引所 AMEX HKEx HKEx AMEX
AUM USD 1.48 billion HKD 95.25 million HKD 384.13 million USD 493.8 million
経費率 0.70% 0.65% 0.68% 0.70%
銘柄数 42 30 20 96
トップ3銘柄 Tencent Holdings Ltd (HKEx: 0700)

Alibaba Group Holding Ltd ADR (NYSE: BABA)

Meituan Dianping Class B (HKEx: 3690)

Alibaba Group Holding Ltd ADR (NYSE: BABA)

Tencent Holdings Ltd (HKEx: 0700)

Meituan Dianping Class B (HKEx: 3690)

China National Software (SSE-A: 600536)

Meituan Dianping Class B (HKEx: 3690)

Yonyou Software Co Ltd (SSE-A: 600588)

Alibaba Group Holding Ltd ADR (NYSE: BABA)

Meituan Dianping Class B (HKEx: 3690)

Tencent Holdings Ltd (HKEx: 0700)

ETFの情報は2019109日時点で最新のものとなります。

 

おわりに

中国は8億を超えるインターネットユーザーを抱えていますが、この数字は未だ中国の総人口の60%に過ぎません。都市化が加速し、インターネットインフラに手が届きやすくなれば、同国のネット利用者は今後さらに飛躍的に増加するものと思われます。

5Gテクノロジーの出現は様々な産業の成長に拍車をかけるでしょう。そして産業間の相互のつながりは、中国の大手テック企業がコアビジネスへの依存度を低め、多角化戦略を推進する手助けとなります。

例えば、アリババのクラウドサービスは同社の収益源として最も成長率の高い事業となっています。この新たな戦略的ビジネスユニットは柱であるeコマース事業と並んで同社の総収入を支えています。アリババの多角化戦略は同社の競争力を確かなものにすると同時に、今日のデジタル世界における持続性を保証するでしょう。

巨大なネット利用人口とテクノロジーの進展—これらを両翼に、中国はネット企業の成長を後押しし、拡大する消費者ニーズを念頭においた中国テック大手によるR&Dを促進しているのです。

 

 

 
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参考:

[1] https://www.chinainternetwatch.com/29010/china-internet-users-snapshot/

[2] https://www.internetworldstats.com/top20.htm

[3] https://www.android.com/everyone/enabling-opportunity/

[4] https://www.chinainternetwatch.com/29010/china-internet-users-snapshot/

[5] https://www.ishares.com/ch/individual/en/literature/whitepaper/megatrend-en-emea-whitepaper.pdf

[6] https://www.chinadailyhk.com/articles/157/197/4/1562735428505.html

[7] https://chinapower.csis.org/china-middle-class/

[8] https://www.bain.com/insights/consumption-in-china-ten-trends-for-the-next-ten-years/

[9] https://www.spglobal.com/marketintelligence/en/news-insights/blog/china-leads-rise-of-mobile-super-apps

[10] https://www.scmp.com/tech/china-tech/article/2098948/china-plans-28-trillion-yuan-capital-expenditure-create-worlds

[11] https://www.barrons.com/articles/the-real-5g-winner-could-be-china-51570228459

[12] https://www.scmp.com/news/china/military/article/2184493/why-5g-battleground-us-and-china-also-fight-military-supremacy

 

出典:https://www.poems.com.sg/market-journal/rise-of-the-china-internet-dragons/

 

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